恋愛倶楽部 -love-



どう対応すればいいか解決策が浮かばない。

逃げ出したい衝動に駆られるのに、逃げ出せない。


「そうやって他人の同情を誘ってるの?
ズルいね、結局は1人じゃ行動に移す勇気もないくせに」


視線が痛くて、すごく痛くて。

必死に堪えていた感情が、たった今溢れ出す。


「まだ引きずってるんでしょ?
過去の恋愛に傷つくのは勝手にすればいい。
ただ、私情に他人を巻き込むな」



黎緒先輩の“アレ”、イコール、二重人格。

無許可でつくった方程式が、頭に浮かぶ。


ただでさえ怖いのに、こんな時にお説教か。

あたし、もつかな……精神的にヤバいかも。



泣きたくない。

人前で泣くのは弱味をさらけ出すのと同じ。

だから、泣きたくない。


唇を噛みしめ、溜まり始めた涙が零れないようにブレーキをかける。

そんな様子を、鋭敏な彼が見逃すはずがない。


「泣けば誰かが助けてくれるとでも思ってるんだろ」

囁くような低音が、耳を通じて全身へ渡る。


泣くな、あたし、泣くな。



「他人を巻き込んで、挙げ句助けてもらおうなんて……本当にムカつくよ、おまえ」

泣いたら負けだぞ、ゆずゆ。

だから………


「そういうの、ウザいって少しは自覚ないのかな。
それともバカだから気づけない?」


………泣くなっ!!



暗示をかけるように何度も唱えて、唱えて唱えて。

我慢してるのに、なんで?



気持ちでは我慢できても、涙は身勝手に軌跡を残す。






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