恋愛倶楽部 -love-



ただただ慣れないことに、心臓がおかしなくらいバクバクいってる。


慣れないのは、こういう状態であることを指してるわけじゃなくて。

相手が黎緒先輩だからで。




「……泣くのは、ただの逃避だよ」

混乱を和らげるように、少しだけ優しさが戻った口調で話を続けられる。


「悔しかったら突っ走ってみなよ、いつもみたいに」



言われたことは、ほとんど当たってる。

あたしの本心は、全部と言っていいほど見抜かれてる。


たった1つを除いて。



「……あたし、引きずってません」


過去は、過去でしかない。

振り返ったって、どうにもならない。



今亜蓮を思い出すと苦しいのも、つらいのも、寂しいのも、欲張りだからなの。


嫌なことがあったり、孤独になったり、不幸だって感じることなんかない。

一緒の思い出が綺麗すぎて、綺麗な思い出に幸せの基準を置いてしまうから。


助けがほしい時、すがりつける相手がいることに幸せの基準を置いてしまうから。




「ごめんなさい。
少しだけ、逃避させてください」


結局泣いて逃げて、誰かにすがりつく自分はバカなくらいに弱い。

そんなの、とっくに知ってるよ。



黎緒先輩、ごめんなさい。

温もりに甘えてしまって、ごめんなさい。






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