恋愛倶楽部 -love-
謝った声は賑やかな街中では小さすぎて、たぶん届いてない。
それでも、いいや。
今はただ、自分の心に生まれた罪悪感を消し去りたかっただけだもん。
謝ることで、自分を正当化したかった。
結局は、弱い人間がする自己防衛にしか過ぎないんだけどね。
「ま、オレが反対するのはオレのワガママもあるから。
だから、ゆゆだけが気にすることじゃねーよ」
それまで一切こっちを見なかった奏斗が、不意にこっちを向く。
かと思うと、すぐに自由なほうの手で髪をぐしゃぐしゃとやってきた。
「髪型崩れるー」
文句を言っても笑顔で動作を続けるから
「てめぇ、ハゲさせんぞこら」
掴まれてないほうの片手で、相手の髪の毛を引っ張る。
「いてててててて」
「ふんっ、ざまあみろ」
なんて平和なんだろう。
あぁ、平和すぎて怖いくらいだよ。
「いてっ、いててて、ちょっ、強いマジでハゲるヤバい」
「万一ハゲても育毛剤という素晴らしいものがあるから大丈夫だよ」
最終手段ではカツラという万能アイテムもあるぞ。
心配しなさんな。
「心境的に大丈夫じゃねーからさ、それ」
「奏斗から髪引っ張るネタを奪ったら何が残るの?
何も残らないでしょーが」
「んなこと以前に髪なくなったら、おしまいだっての!」