恋愛倶楽部 -love-
勃発する髪引っ張り合い対決。
果たして、こんな人通りの多い場所で繰り広げるべきなのか。
やられっぱなしは悔しいから、自然とじゃれ合う羽目になるのは仕方ない。
声を荒げてくだらない文句を浴びせて、お互い息を切らせたのは意外と早かった。
「てか…っ、オレら目的…はぁっ…見失って…」
「そーだ……っ風音!」
「ちょい、ゆゆ、走んなってー!」
こんなことしてる場合じゃないよ。
風音が迷子になる前に探し出してあげないと。
あのコ、たまに黒いけど顔は可愛いし誘拐されちゃってたりでもしたら………
「うわーん、ゆゆーっ」
被害妄想した矢先、聞き覚えのある泣き声があたしを呼ぶ。
「ゆゆ、あそこっ……ぜーはー……」
あとから追いかけてきた奏斗が、膝に片手をつきながら少し前を指差した。
おまえは掃除機か、とツッコミたくなるほど息を吸い込んでる。
酸欠か?過呼吸か?
運動部なのに、あたしより体力ないってどういうことよ?
疑いの目を向けてから、その指で示された方向へと顔ごとずらした。
「落ち着いて、大丈夫だよ。
きっと、ゆゆちゃん迎えに来てくれるよ?」