恋愛倶楽部 -love-



朦朧とした意識の中、誰かのぬくもりが確かに近くにあって。

聞き慣れた声があたしを呼んでるのに、それに答えることができない。



行き着く果ては、深い深い闇の底。

光が差したのは、どれくらい時間が経ってからだったんだろう。





───ふんわりと感じる甘い香り。


香水、かな?




気を失わされてから、再び目を開ければ状況の把握なんて簡単だった。



「あら、お目覚め?
可愛い子猫ちゃん」

歪んだ視界に入り込んだのは、紅珠沙の1人春海の姿。


なんでこの人がこんな場所に?


って、はぁ!?

ここどこ!?


甘い香りが漂って、知らぬ間に酔ってしまいそうな空間。

窓ガラス越しに見える景色は、特別知らないというわけではなかった。

通学路を少し外れた閑静な車道の真ん中で止まってる。



「あたしをどうする気なの」


ここは、この間目にした例の真っ赤な車の中だ。


「どうもしないわ。
食べたりしないから安心して。
私、残念だけど女を襲う趣味はないの」

誰も襲われること期待してないんだけど。

いやむしろ、食べられる心配がなくても安心できないっつの。



「今日は、あなたと2人きりでお話がしたくて」





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