恋愛倶楽部 -love-
触れていた指が離れていく。
何を言われるのかと内心ビクビクしながら、車のドアを開けようと試みた。
「そういう反抗的なコって、逆にいじめたくなっちゃう」
ガチャッと中途半端にドアが開く音がしたと同時、伸ばされた手に捉えられる。
「“今回は”逃がしてあげるわ。
次は捕まらないようにね、可愛い子猫ちゃん」
囁くように言われたあと、解放されたあたしはすぐさま車から降りた。
振り返ることはしない。
とにかく、ここから離れたくて。
「はぁー‥」
安堵のため息を零して、大通りのほうへと足を進める。
怖かった。
具体的に何がとは言えないんだけど。
…………あっ!!
しばらく歩いて思い出したこと。
牡丹は!?
あたし、牡丹を探してたのに何やってんだろ。
こんなとこで捕まって。
もしかして牡丹も紅珠沙に!?
慌てて振り返ってみても、今さら遅すぎる。
当然さっきの場所に、あの真っ赤な車はない。
とりあえず、連絡取らないと。
ケータイを開くと着信が2桁を越えていて、大半は風音と奏斗から。
………あれ?
その中に1つだけ、表示されている牡丹の名前。
時間を見ると、数分前にかかってきていたらしい。