恋愛倶楽部 -love-



ゴミ屋敷とかに住んでる人からしたら、夢いっぱいの場所なんだろうな。

このガラクタの中に、いったい何が眠っているのか。

どんなお宝が見つかるのだろうか、とか。



あたしには、ただの物置にしか思えないんだけど。


片手を顔の前で振って、埃を遠ざけようと試みる。

実際に効果あんのかなんて知らない。

こうすることで、気分的に少し楽になるだけ。



一刻も早く牡丹を探し出して、この重苦しい空間を抜けたい。



「………あ、」

再び名前を呼びかけようとして、地に置かれたあるものが視界に入り込む。


そっと持ち上げると、液晶画面にひびが入っていて。


「牡丹………」


もう電源を入れても使いものにならなくなった、薄桃色のケータイ。

開きっぱなしだったそれを閉じると、綺麗な牡丹の華のデザインが見える。


前に聞いたことがある。

デザイナーである牡丹のお母さんが、自分でデザインしたケータイだって。

牡丹にプレゼントしたんだって。



こんな大切なものが、どうして?



「牡丹っ、どこにいるの」

これじゃ、まるで誰かの手によって壊されたみたいじゃん。


ケータイがあったことによって、確かに牡丹はここにいたって証明されるけど………。






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