恋愛倶楽部 -love-
どうしようもなく不安になって佇んでいると、カランと軽い金属が落ちるような音がした。
背後からだ。
怖くなって少し進むと、足音がだんだん近づいてくる。
ヤバい。
恐怖心に煽られて建物の奥へと走り込めば
「ひゃっ」
散乱したガラクタに足を引っ掛けて転んじゃうし。
ぶつけた膝をさすりながら顔をあげた途端、視界の隅に誰かが見えた。
よく見ると両腕を紐で縛られてる。
ぐったりと倒れていて、顔は髪が邪魔をして見えない。
「牡丹!?」
たとえ髪が邪魔してたって、わかるもんはわかるんだ。
前からうしろになるほど短くなってくセミロングの髪型だって。
真っ白な肌だって。
華奢な体つきだって。
今日の牡丹の服装だってしっかり暗記されてるんだから。
慌てて寄ろうとしたのに、大きくなる足音に動けなくなる。
「誰!?」
意を決して振り返ると、見知らぬ女の子が無表情のままこちらへ歩いて来た。
年は同じくらい。
小柄で、牡丹にそっくりの髪型。
あたしは、手を地についてゆっくり立ち上がると数歩後退して身構えた。
「あなたが、牡丹を誘拐したの?」