恋愛倶楽部 -love-
◆闇紫苑
「きゃっ!」
すれ違いざまに衝突して地に手をつく。
唇を噛みしめながら立ち上がると、濡れたアスファルトに転がった缶。
おそらくぶつかった衝撃で相手が落としたものだろう。
………あいつが、よく飲んでたミルクティーだ。
無意識にも、相手が缶に手を伸ばすまで視線をミルクティーに集中させてしまった。
「っごめ‥なさい」
顔をあげられずに、声にならない声で謝ってその相手の横をすり抜ける。
雪が降りしきる街路。
揺れるマフラーが人混みを駆け抜ける邪魔をする。
だけど今はそんなことを気にとめる余裕すらない。
季節は冬──クリスマスが近づいて街が賑わう頃だった。
もうすぐ高校2年生になろうとしていたあたしに訪れた、突然の決別。
「俺、他に好きな人いんだ。
だから別れて。
ごめん……」