恋愛倶楽部 -love-



照れ屋なんだよね、あいつは。

ついでに、あたしは負けず嫌い。


衝突するのは毎度のことで、特別珍しくもないんだし。

謝れば、たぶん相手も許してくれる。

でも謝ると、逆ギレしたのはあっちなのに、あたしが悪いみたいじゃん。


納得いかないんだよなぁ。



「うっわ、マジかよ。
勘弁してよー」

笑顔をつくることなく、俯いてヒドい顔になっていたであろうあたし。

隣にいる彼の、ため息混じりな声に無意識に視線を斜め上にあげる。



「誰かからメール?」

ケータイを見ていたから、気になって質問を投げかけてみた。


「うん……って、ごめん電話来た」

出ていい?という言葉に、拒否する理由もないため首を縦に振る。



【ごめん】



ケータイを耳に当てて、それから音を発しないまま動いた唇。


なんだかそれが、周りの人には聞こえないメッセージみたいで。

つい、あたしに背を向けて話してる凪兎に見入ってしまう。


弓道部に顔を出しに行った時、牡丹がよくやってたな。

口パクで【ごめん】とか、指を立てて【あと1本だけ】とか。



「え?いや、別に。
つーか、今さら何?
俺、今忙しいんだけど」






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