恋愛倶楽部 -love-



「来んな、近づくな、動くな」

動くな、って。


「だから言われると動きたくなるんだって」

それ以前に、静止状態維持とか無理だし。


「んなの、言い訳だろ」

「言い訳じゃないもん」



反論を言い続けながら、ついに寿羅のいる布団の上にたどり着く。

と、相手はできる限り壁側へと退いて行った。


なんで、こんなに避けられなきゃいけないんだろう。


あたしって、とてつもなく嫌われてるの?


牡丹に対しては、もう少し優しいと思うんだけど。

単に牡丹のが、立場が上なだけかな?



「日記帳とか、見るなって言われたら見たくなるでしょ。
それと同じ心理だよ」


とっさに思いついた具体例を述べて、試みた説得。


絶対見たくなるよ。

見るなって言われると、中身が何なのか気になるもんね。



そっぽを向くのを見て、今回ばかりはあたしの勝ちだと確信した瞬間。


「てめーは、誰かから好きになるなって言われたら、そいつのこと好きになんのかよ?」


は……?



膝をついて、前に進もうと伸ばした片手が一瞬空中に浮く。

すぐに手をおろすと、あたしは落ち着かなくて数回瞬きした。






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