恋愛倶楽部 -love-
亜蓮………。
あの日さよならしたのに、どうやっても忘れられないよ。
大好きだったから、嫌いになれなかった。
あたしじゃない誰かを選んだと知っても、嫌いになれなかった。
「「デジャヴ……」」
無意識に呟いた声が重なる。
見つめたままのミルクティーを、伸びてきた手が拾った。
前と違うのは、アスファルトを濡らしているのが雪でなく雨であること。
すぐにこの場を去らなかったこと。
それから………
「大丈夫ですか?」
差し伸べられた手があったこと。
俯いていた顔をあげていくと、乱れた髪の隙間から前が見えた。
起きて着替えてすぐ出て来ちゃったから、ボサボサの黒い髪。
「あ………」
だから、あたしはすぐに気づいたのに。
相手は目をぱちぱちして、しばらくしてから驚いたように見開いた。
「あれ、えーっと……ゆずゆ?」
つい数分前に電話していた相手が、目の前に。
もし神様が存在するのなら、本当に本当に意地悪だ。
助けを必要としている時、あたしを凪兎に会わせたんだから。
今1番甘えやすくて、優しくしてくれて。
心の奥底では気づいてた。
今1番、あたしが会いたいと願った人。