恋愛倶楽部 -love-
サラサラの長い黒髪に、宝石みたいに透き通った瞳の上で揃えられた前髪。
これは、まさに夢の中の美少女。
「えーっと、そのコは───」
言いかけたと同時、勢いよく空気が肌にぶつかる。
「お嬢さん、お名前は?」
あたしの近くにいた奏斗が、突風のごとく移動したから。
もちろん、そのお客様の元へ。
「今この瞬間、オレたちが出会ったのは運命が重なったからだと思うんだ」
あーぁ、また始まったよ。
ため息をついた黎緒先輩は、教室のドアを閉めるとこっちへ近づいてくる。
「相手にしないほうがいいんじゃない?
いつもの“アレ”だと思うよ」
それからそっと耳打ちすると、今度は定位置の座席に腰掛けた。
「いつもの“アレ”…ね」
“アレ”、イコール、ナンパ。
「今夜、オレと秘密の過ちを犯さないか?」
「……奏斗、お願いがあるんだけど」