恋愛倶楽部 -love-
気になって、つい手に取った1冊のノート。
中身を見ずに、表紙をただじっと眺める。
初めて知ったんだ。
科目が表された下に、綺麗な字で書かれた名前。
“千早 凪兎”。
「ちはや……なぎと?」
苗字、今まで知らなかったから。
今日、初めて知った。
それに字が綺麗なことも。
教科書を見て、学年が一緒だってことも。
凪兎はあたしのこと、どれくらい知ってるの?
あたしは全然、あなたのこと知らない。
ノートを机の上に戻して、ほんの少し寂しくなる。
友達のつもりでいたけど、あたしたちはお互いのこと何も知らないね。
開かれたページはそのままに、漫画を退けてベッドに座って。
薄暗い部屋に、独りきり。
閉ざされたカーテンの向こう側では、相変わらず雨音がリズムを奏でていた。
あー‥なんかムカつく。
原因は不明。
だけど、無性に腹が立つ。
何に対してなんだろう。
よくわからないけど、凪兎のこと何も知らないのが悔しい。
知りたいと思う。
それって、単に謎が多いせいだよね。
ふと手元に何かが当たったと思い見てみると、漫画とは違う素材と大きさの冊子。
見たところ、アルバムみたいだ。