恋愛倶楽部 -love-
「あんたに会いに行こうと思って、走ってた」
それで、あたしとぶつかった。
「ミルクティーは?」
「なんとなく、買っただけ」
「……そう」
そこで会話が完結する。
転がった、ミルクティーの缶。
雪が舞い散る冬の日と同じ、“デジャヴ”。
あたしたち、お互いのこと全然知らないよね。
だから、どうして声が重なったのか、すぐには気づけなかったの───‥。
「最初は、ゆずゆだってわかんなかった。
雰囲気違ったし」
「うん」
「でも顔見たらわかった」
「うん」
頷くしかできないけど。
盗み見た凪兎の横顔は、どこか寂しそうだった。
「ねぇ、」
だから声をかけずにはいられなくて。
「あたし、嬉しかったよ。
電話してくれたこと」
なんだか今だけは、いつもより素直でいられる気がして。
「今度は、あたしから電話してもいい?」
この繋がりを切りたくなくて。
「うん、待ってるよ」
言って柔らかく笑ってくれたことが、何よりも嬉しいの。
「じゃあ、約束しよ?」
小指をくっつけて指切りをする。
どんなことでも良かった。
きっと、そう。
凪兎とまた話すための言い訳が、欲しかっただけだから。