恋愛倶楽部 -love-
「はい、傘」
リビングへと消えていくお姉さんを見送っていると、横から伸びてきたものが。
「大丈夫だよ、借りたら返すの忘れそうだし」
だけど、あえて受け取らずに玄関を開ける。
相変わらず、雨降ってるな。
時折弱くなったりするんだけど、止みそうにはない。
「大丈夫じゃないだろ。
濡れたら今度こそ熱出るかもよ」
「大丈夫だって」
渡される傘を押し返すが、どちらも譲らず。
「あんたが大丈夫でも、俺が大丈夫じゃないの。
ほら、行こう」
「あっ、ちょっ」
無理矢理腕を引っ張られて家を出る。
いくら何でも強引すぎるっしょ。
バサッと音を立てて開かれた傘。
あたしの体は軒下から、あっという間にその傘の下。
「家どっち?」
見上げれば、いつもより近くに凪兎がいて。
予想してなかった、1つ傘の下に並んで2人。
「あたしの家じゃなくて、友達の……」
「うん、それでどっち?」
「……こっち」
押されるがままに、牡丹の家に行く道を示す。
歩き出したのはいいものの、あの……すごく歩きにくい。
ちらちらと隣を気にしながら、視線が合ったら困るから目線は足元へ。