恋愛倶楽部 -love-
さっきから聞き慣れない言葉が降ってきて。
頭脳労働が苦手なせいか、すぐに理解できない。
ぼーっとし続けるあたしの唇を、綺麗な指がなぞったかと思えば
「好きな人の幸せが自分の幸せだ、それが前から蘭さんが言ってた答えじゃなかったっけ?」
自身、忘れていた言葉を教えてくれた。
それから、少しだけ距離をとると静かに目を閉じて。
「次、起こしたら遠慮しないよ。
おやすみ」
何事もなかったかのように眠ろうとする。
なぜか今日の黎緒先輩は優しい気が。
うーん…気のせい、かなぁ。
疑問が残る中、倒された布団から抜け出そうとすれば、回された腕がそれを阻止。
風音じゃないんだからさ。
離してくれてもいいのに。
というか、実際黎緒先輩の場合は眠ってるのか“フリ”なのかが不明だ。
渋々その場に居座ると、あたしにも襲いかかる睡魔。
まだ誰も帰ってこなそうだし、ちょっとだけ………
深い眠りの世界へ。
誘われる瞬間よぎるのは
【ごめん……】
好きだった人が告げた、別れ際の寂しい謝罪と
【友達でいよう】
最近出会った人が告げた、見えない壁をつくる約束。
「偽物のぬくもりはあげられても、本物の幸せはあげられない」
夢現に聞こえたのは、優しい声音。
黎緒先輩の手が、髪を撫でてくれているんだと知ったら不思議と何も怖くなかった。