恋愛倶楽部 -love-



さっきから聞き慣れない言葉が降ってきて。

頭脳労働が苦手なせいか、すぐに理解できない。



ぼーっとし続けるあたしの唇を、綺麗な指がなぞったかと思えば

「好きな人の幸せが自分の幸せだ、それが前から蘭さんが言ってた答えじゃなかったっけ?」

自身、忘れていた言葉を教えてくれた。


それから、少しだけ距離をとると静かに目を閉じて。

「次、起こしたら遠慮しないよ。
おやすみ」


何事もなかったかのように眠ろうとする。

なぜか今日の黎緒先輩は優しい気が。


うーん…気のせい、かなぁ。


疑問が残る中、倒された布団から抜け出そうとすれば、回された腕がそれを阻止。


風音じゃないんだからさ。

離してくれてもいいのに。


というか、実際黎緒先輩の場合は眠ってるのか“フリ”なのかが不明だ。


渋々その場に居座ると、あたしにも襲いかかる睡魔。

まだ誰も帰ってこなそうだし、ちょっとだけ………



深い眠りの世界へ。

誘われる瞬間よぎるのは

【ごめん……】

好きだった人が告げた、別れ際の寂しい謝罪と

【友達でいよう】

最近出会った人が告げた、見えない壁をつくる約束。




「偽物のぬくもりはあげられても、本物の幸せはあげられない」

夢現に聞こえたのは、優しい声音。

黎緒先輩の手が、髪を撫でてくれているんだと知ったら不思議と何も怖くなかった。






< 268 / 432 >

この作品をシェア

pagetop