恋愛倶楽部 -love-
閑散としたこの場に、佇むあたしは何がしたいんだろう。
せっかく気づけたことがあるのに、それも伝えられないまま。
あたしはきっと、凪兎が好きなんだと思う。
もっと知りたいと思うし、そばにいたいとも思う。
だけどそれ以上に、大切な仲間がいる。
「………あはは、捨てられちゃった」
力なく振り返って笑うあたしに、寿羅は歩み寄って。
「行くぞ、本伊が待ってる」
どこかつらそうな、真剣な顔をして手を差し出した。
「ありがとう」
こんな時、何を喋ればいいか知らない。
話題を振る代わりに、声に出したのはお礼。
手を握れば、ゆっくりと足は前へ進む。
寂しくて、つい凪兎のいた場所を振り返っちゃったけど。
何も言わずに、寿羅が強くあたしの手を握りしめてくれた。
これでいいだなんて、思ってない。
凪兎と今日で最後なんて、思いたくない。
繋がった手を見て思い出すのは、やっぱり凪兎で。
伝わってくる体温さえも、今は儚く感じられた。
春海に止められて通れなかった出口。
そこを抜けると、広々とした道路。
少しだけ歩いて、角を曲がった所。
「ゆずゆちゃんっ、」
寿羅の言った通り、牡丹の姿があった。