恋愛倶楽部 -love-



目の前にある、ちょんまげになった前髪を引っ張って引き離す。

視界に大きく写り込むのは、痛そうに顔を歪める奏斗。


「え……なんで、いんの?」

「いやいや、その前に髪の毛掴む手退けようぜ?」


あたしの右手首を握って、涙目で訴えてくる。

ごめんね。

このままだと絶対、脱毛症への道に進んじゃうよね。



奏斗がいることと、いつも通りに会話できていることに驚いて。


「あのな、ゆゆ、ごめん」

言ってくれた【ごめん】に、生まれたのは安心感。


あたしも謝りたいのに、変なところで強がりで。

あたしから話しかければ良かったのに、バカみたいに臆病だから。



「オレ、別にゆゆが嫌いだから避けたり、反対したりするんじゃないからな」



勇気がなくて行動できないあたしに、奏斗から謝ってきてくれて助かったの。


あたしも、ごめんね。


そう返したいけど、溢れ出す懐かしさに言葉にするのはひと苦労。

照れくささが邪魔をして、相手の顔を見れなくなった。



「嫌われたかと思った……」

零れた心配事を消すように、顔をあげると映る笑顔。


「オレ、ゆゆのこと、ちょー好きだし!」

それも、とびっきりの。






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