恋愛倶楽部 -love-
あたしを含めた傍の人間は、2人が尽き果てて倒れるまでケンカを見守る羽目に。
何が嬉しくて、仲間割れを見てなきゃいけないんだ。
止めたいという気持ちはあるのに、妙な立ち入り禁止の空気にその場を動けない。
「勝手にやらせときゃ、そのうち熱も冷めんだろ」
なんて寿羅は言っていたけど、心配せずにはいられない。
風音の雰囲気からして、怪我が怪我ですまなそうだもん。
案の定、殴り合った2人の顔は痛みに歪んで。
痣ができたり、出血したり、ほらやっぱり心配しちゃうじゃん。
「ケンカは済みましたか?」
制服が汚れることも構わずに、そのまま寝っ転がる2人を見下ろして牡丹は尋ねる。
奏斗と風音は顔を見合わせて、困ったような笑みを浮かべた。
すっかり、風音からは不穏なオーラが消えてるし。
いったい何なの、この人たち。
「引き分け、だな」
疲れた、と続けて奏斗が腕を伸ばす。
「ねぇゆゆーっ、」
その隣に横たわる風音が、不意にあたしの名前を呼んだ。
「なに?」
声がちゃんと届くように、近寄ってからしゃがむ。
こちらを見つめる風音の顔には、満足げな柔らかい笑顔。
よくわからなくて首を傾げてみせると、相手から再び口を開いて。
「だいっきらい」
あどけなさの残る声が、そう告げた。