恋愛倶楽部 -love-
さっきまでの感動は何処へ?
「さっすが黎緒くん、わかってるぅーっ」
牡丹のお母様まで違うスイッチが入っちゃったし。
騒がしくなった部屋を横目に、あたしは静かに来た道を戻る。
何はともあれ、風音も寿羅も無事で良かった。
気になるのは、黎緒先輩のことで。
風音があの日……というか昨日黎緒先輩と話してたことが意外。
話すタイミングなんて、あったのかな。
実際話してるんだから、あったに違いないんだけど。
ところで、奏斗と牡丹は?
ふと思い出したとこで、あたしたちが寝ている部屋より奥に人影があるのが見えた。
昼間に遊んでいた縁側に、並んだ影が2つ。
月明かりに照らされて、ぼんやりと姿が浮かぶ。
「本当に、それでいいんですか?」
真夜中に響く高い音。
声をかけようか迷って様子を窺うと、何やら雰囲気は深刻そうだ。
「おうっ、もう決めたんだ。
男に二言はない!」
「ですが、自分の気持ちを押し潰してまで───」
反論する言葉を遮るように、奏斗が牡丹の頭に手を置く。
それから優しい口調で続けた。
「亜蓮先輩の時もそうだったんだから、オレは今回も見守るほうが合ってる。な?」
何の話をしているのかは、わからない。
けど今、どうしても忘れられない名前を聞いてしまった気がする。