恋愛倶楽部 -love-



さっきまでの感動は何処へ?


「さっすが黎緒くん、わかってるぅーっ」

牡丹のお母様まで違うスイッチが入っちゃったし。


騒がしくなった部屋を横目に、あたしは静かに来た道を戻る。



何はともあれ、風音も寿羅も無事で良かった。


気になるのは、黎緒先輩のことで。

風音があの日……というか昨日黎緒先輩と話してたことが意外。


話すタイミングなんて、あったのかな。

実際話してるんだから、あったに違いないんだけど。



ところで、奏斗と牡丹は?

ふと思い出したとこで、あたしたちが寝ている部屋より奥に人影があるのが見えた。


昼間に遊んでいた縁側に、並んだ影が2つ。

月明かりに照らされて、ぼんやりと姿が浮かぶ。



「本当に、それでいいんですか?」

真夜中に響く高い音。

声をかけようか迷って様子を窺うと、何やら雰囲気は深刻そうだ。



「おうっ、もう決めたんだ。
男に二言はない!」

「ですが、自分の気持ちを押し潰してまで───」


反論する言葉を遮るように、奏斗が牡丹の頭に手を置く。

それから優しい口調で続けた。


「亜蓮先輩の時もそうだったんだから、オレは今回も見守るほうが合ってる。な?」



何の話をしているのかは、わからない。

けど今、どうしても忘れられない名前を聞いてしまった気がする。






< 338 / 432 >

この作品をシェア

pagetop