恋愛倶楽部 -love-
声をかけるわけにもいかず。
何もなかったかのように、部屋に戻って眠れる気もしない。
ある程度距離をとった場所で、壁に寄りかかりながら2人の会話に耳を傾けた。
「………ですが、」
「牡丹だって、ゆゆが大事だろ?」
「それは、そうですけれど」
また、こっちでもあたしの話?
「やっとゆゆが気づけた恋の邪魔とか、できるわけねぇじゃん」
奏斗が発したセリフに、思わずドキッとしてしまう。
恋の、邪魔って?
え?
なんで、どこでもあたしが恋愛してることになってるの?
なにこれ、あたしってそんなにわかりやすい?
「恋愛の悩みは、恋愛でしか解決できないんだぜ?
なのにその機会を壊すなんて、無理だっての」
これは、あたしの知らないところで正しいかも不明な情報が回っているのか?
「そりゃあな、ゆゆが知らないヤツに取られちまうのは涙が出るくらいにはつらいけどさ」
「それって、相当無理なさっているんじゃ……」
「るせぇっ、無理なんかっ……いや、してる、けど」
なんでだろう。
2人があたしの両親に見えてくる。
「ゆゆは、ずっと誰かを好きになるのを怖がってたけど……それが治るならオレはそれでいい」
視線を足元へ落として、同時に零れる吐息。
わかって、くれてたんだ。
あたしが、誰かを好きになるのが怖くて認められないこと。