恋愛倶楽部 -love-
ずっと近くにいてくれたもんね。
奏斗は、亜蓮とあたしが付き合ってた頃から大親友だった。
つらい時、相談にも乗ってくれてた。
だからお互いに、お互いのことはよく理解してるんだ、って思ってたの。
「オレは、この先ずっとゆゆの親友でいてやるんだ。
あいつ、可愛いけど性格が強引だから友達つくんの下手くそだし」
「奏斗さん……」
「だぁーっ、頼むから何も言わないで牡丹!
オレの決意が揺らぎ始めてるからさ!」
大声を出して立ち上がった奏斗は、両腕を真上にあげて伸びをした。
座ったままの牡丹が、それを見上げて。
「私も、ゆずゆちゃんを見守ります」
暗闇のせいで見えないけど、たぶん牡丹は笑ってる。
そういう表情の時の喋り方だ。
あたしは複雑な気持ちになって、部屋へ戻ろうと足を進める。
外は真っ暗で、時間は夜中なはずなのに。
眠りにつく人間とは違って、鳴き声を奏で続ける虫たち。
それはどこか寂しそうで、切なくて、ちょっぴり優しいメロディー。
もう一度、ちゃんと凪兎と話そう。
それから、あたしの気持ちを伝えよう。
明日……その覚悟を決めるために、亜蓮に会いに行こう。
誰かを好きになることは、怖くなんかない。
そうだよね?
「けどまぁ、1回くらいは“好きだ”って言わせてほしいよな。
……はぁー‥鈍いから無理か」
部屋に入る直前、奏斗が呟いた言葉をあたしは知らない。