恋愛倶楽部 -love-
◆今までずっと
「……あの、さ」
片手に持った荷物を握りしめて、必死に口を開く。
行き慣れた部屋。
綺麗に整頓されすぎて、寂しい感じさえも漂わせる。
1年前の今日だったら、笑顔でここに来れたかもしれない。
こんな風に、気まずさなんてなかっただろう。
ついさっき閉めた部屋の扉の前に立って、動けずに静止。
ベッドに寝っ転がって天井を見上げる相手を、あたしはちらちら見ながら話を続けた。
「紅珠沙が、動き出すって……だから、その、」
視線がどうしても定まらない。
どうやったって、あなたを見ることを躊躇ってしまう。
「知ってる。
で、本題は?」
見透かされたような言葉は、いつだってあたしを締めつけてきた。
何も変わらないね。
その表情も、低い声も、寂しげなこの部屋も。
「あたし、闇紫苑を助けたいの。
力になりたい」
「それ言うためだけに、わざわざ来たのか」
突き放す態度も、全部。
「……それだけじゃないよ」
切ないくらい、あの頃のまま。
あの雪の日のまま。
「飛び出して行っちゃったから、ちゃんと言えてなかったでしょ」