恋愛倶楽部 -love-
◆もう一度
放課後の教室。
外はまだ明るくて、次々と人数が減っていく。
帰宅する人、部活に行く人、寄り道をして遊ぶ人。
目的は様々で、そんな人たちが無性に羨ましい。
亜蓮と凪兎に会いに行って数日後だった。
すごく迷ったけど、会いに行ったということだけはみんなに伝えて。
“みんな”には、黎緒先輩だけが欠けているんだけど。
「なーに暗い顔してんだよ、ゆゆっ!
女の子は笑ってたほうが美人なんだぜ?」
窓際の壁に寄りかかって教室を眺めていると、突然声がかかる。
目を細めて、八重歯を見せながら笑う奏斗。
「はぁー‥」
無意識にため息をついてしまった。
だいたい、なんで八重歯なの。
マジ、その八重歯削ってよ。
「オレ、何かしちゃった系?」
「別に」
つい態度が素っ気なくなっちゃうし。
ただ、思い出すのが嫌なだけ。
八重歯って言ったら、あたしの中では凪兎が最初に出てくる。
奏斗の印象は、八重歯よりおでこかな…今は。
「ん?オレの顔に何かついてる?
あぁ、ひょっとして気づいてくれた?」
あたしは単純に、おでこを見ていただけなのに。
「へへっ、実はヘアゴムを新しくしてみたんだぜ!」
語尾に星や効果音がつきそうなテンションで言われ、少し戸惑う。
「そっかそっか」
だから、ごめん。
反応に困る。