恋愛倶楽部 -love-
冷てぇ、と言って拗ねる相手を上手く扱えない。
今のあたしには無理だ、このテンションの奏斗の話し相手をすること。
そんな様子を悟ったのか、奏斗はあたしから目を逸らして窓へ顔を向ける。
それから、窓を開けて外へと視線を投げた。
「………ゆゆはさ、」
風に運ばれて、耳へ届く静かな声。
「好きなヤツを、まっすぐ追いかけてればいいんじゃね」
ちゃんと声を逃さず聞くために、目を閉じる。
「相手の幸せを願うのも大事だけど、それは亜蓮先輩の考え方なんだろー?」
尋ねられたことに、そのまま縦に動かす顔。
好きな人の幸せが、自分の幸せ。
“好き”って、そういうことなんだって……確かに間違ってないんだ。
けど、これはあたしの言葉じゃないの。
亜蓮が言ってたことだから。
この考え方って、きっと自虐的なんだろうな。
もしくは、愛他主義っていうか博愛主義っていうか。
「たまには、自分の幸せだけを考えんのもアリだと思うけどなーオレは」
普段通り、のん気な口調で付け加えられる。
「それは蘭じゃねー。
てめーのほうだろーが」
と、奏斗を挟んだ向こう側から別の声。
話に入ってくるなんて珍しいな。
「なに、寿羅暇なの?」
返す言葉も見つからなかったので、ちょっと嫌味っぽく言ってみる。