恋愛倶楽部 -love-
変な印象が植えつけられてないといいんだけど。
それはそうと、風音だよ風音。
「ごめん木仲さん、あたしこれから噂の風音くんに会いに行かないと」
すっかり忘れるところだった、危ない危ない。
両手を顔の前で合わせて謝罪する。
急いで木仲さんの横をすり抜けた瞬間、再び呼び止める声。
「あ.あのっ!」
くるりと回れ右をして、木仲さんを見た。
「私、蘭さんのおかげで前に進めたんです。
恋して良かったって、蘭さんのおかげで思えたんです」
真剣な顔で伝えられる気持ちに、思わず止めた足。
届けられる素直な想いに、入りすぎていた力が全身から抜けていく気がした。
それから、ちょっと照れくさそうに話す木仲さんをじっと見つめて。
「だから、蘭さんもがんばってください。
無責任かもしれないけど、蘭さんならきっと素敵な人に出会えると思います」
変わらず涼しげで、優しい風が頬を撫でていく。
自然と口元が緩んで、紡ぐ言葉。
「ありがとー!」
元気いっぱいに言って、ピースをしてから小さく手を振った。
もう一度、歩き出した時には気づいていたんだ。
木仲さん、ありがとう。
あたし、がんばってみる。
だって今あたしは、すでに素敵な人と出会っているんだから。