恋愛倶楽部 -love-
亜蓮さんらしくないな。
もっと感情的な人だと思ってたから。
雪が降り積もってきて、わずかに白く染まる道路。
それでも、人混みの多いところは積もらずにアスファルトを濡らすだけ。
かじかんだ手に感覚がなくなってくる。
クリスマス前のこの時期は、街が光で飾られて賑やかだった。
にしても、人多すぎだろ。
大混雑なんだけど。
通話中のケータイを、感覚の鈍い片手で必死に握って。
「ま、自分で───‥っ」
言いかけた瞬間
「きゃっ!」
すれ違いざまに、向かい側から走ってきた人とぶつかった。
衝撃で、感覚を失いかけた片手から落ちたミルクティー。
うわっ、亜蓮さんにあげるつもりだったのに。
あの人、潔癖症だから落としたってバレたら怒られそうだな。
現場を想像して、思わず引きつってしまう顔。
ぶつかった相手は、倒れたところから立ち上がって。
……なぜか、ミルクティーを見つめている。
真っ黒な巻き髪に、マフラーをした女の子。
その時見た表情は、今でもはっきり思い出せるんだ。
目が赤くて、泣いたんだってわかった。
「っごめ‥なさい」
俺がミルクティーを拾い上げると、ギリギリ聞こえるくらいの声で謝って。
そのまま横をすり抜けて行った。