恋愛倶楽部 -love-
たぶん、俺も一生教えないと思う。
教えられないっていうより、むしろ教えるのが怖い。
あんたに電話して、いきなり風音に切られた日。
雨の日だったっけ。
あの時、確かに呟いた声が重なった。
「「デジャヴ……」」
地面に転がったミルクティーの缶。
それで確信したんだ。
俺たちはあの雪の日に会ってる、確実に。
それから、俺が使ってる“涙”の理由。
簡単なことなんだ。
あの雪の日に、泣いてた女の子が忘れられなかったから。
涙の理由が気になったから、ただそれだけ。
俺があんたに近づいたのは、亜蓮さんの頼み事が原因。
黒蓮華として刻印を持ったあんたを、亜蓮さんはずっと気にしてた。
心配で仕方なかったんだと思う。
それで、亜蓮さんの代わりに俺があんたに闇紫苑や紅珠沙の情報をメールを通して知らせることにした。
最初に送ったメールは、お試しみたいなもんで。
まぁ、返信は来たんだけど。
【蘭さんの知り合いかな?】って。
“z-”って人から。
それが黎緒だって気づいたのは、もっと後。
俺が闇紫苑だってことのほうが、先にバレてたっぽいし。
鋭すぎて、慌てたのはいい思い出。