恋愛倶楽部 -love-
「いいコだね、蘭さん」
そんな笑顔で頭撫でられても、対応に困るというか。
黎緒先輩の今の優しい笑顔の下の下の奥底に眠る顔を思い出すと
「子ども扱いしないでください」
ジワジワと恐怖がこみ上がってくる。
「2人きりの時なら、ちゃんと大人扱いしてあげるよ」
そっと囁かれた声色は、周囲の知らない秘密の色。
「あははー‥、時間もないし、行きましょう先輩」
必死に取り繕った笑顔はたぶん……いや、かなり引きつっていたと思う。
未だに言い争いをする人たちの影を通って、部室を抜け出す。
仕方なしに黎緒先輩と並んで歩く廊下。
こんな場面を誰かに見られたりしたら、確実に恨まれる。
それこそ、中身が極悪な女子に目撃なんかされようものなら
「がんばれ、あたし」
そのうち不登校になるかも。
「上手く聞き出せるといいね」
そう、この綺麗な笑顔を振り撒く大魔王によって。
どうしてみんな気づかないの?
黎緒先輩が腹黒いってこと。
普段は王子様だけど、実際の姿は他人をけなして遊ぶ大魔王。
面白ければ何だっていい。
頭ん中で、そんな恐ろしいことを考えている魔物だよ?
そりゃまぁ、美形だし?
あたしだって最初は騙されたけどさ。