不器用な関係
引っ張られた勢いで、バランスを崩した私はそのまま後ろに倒れ込んだ


“トン”
倒れた場所から爽やかな香りが鼻をかすめる


「あ、渉?」


顔を見なくても十中八九渉だろう


スルリと渉の長い腕が私のお腹辺りに回されて


「誰?」


「誰?ってクラスメイト。」


「何で?」


「何でって何で?」


会話になっているようでなっていない私達


渉は必要以上に喋らない というか、必要な部分も喋らなかったりする


私も渉のことを言える立場じゃないけど、渉ほどは酷くないと自負している


「あ~っ、すんません。 俺が勝手に一緒にいただけっす。」


私達に見兼ねたのか、三神君が会話に入ってくれた


「行くぞ。」


渉は三神君を一睨みして 私の左手を取って歩きだした


「あっ、三神君 またね。」


振り返って三神君に声をかけるも、再び強く左手を引っ張られてその場を後にした




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