不器用な関係
「な~んだ。意外に速かったなぁ。夏前に終わるじゃん。」


誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いて、私は静かにその場所から立ち去った


その日、私はいつもの東門へ行かなかった


行けば今日で渉との関係が終わることは分かっていた


私の中のちょっとした反抗心



例え偽りだったとしても渉の大きな右手と腕の中の温かさは、私にとって心地好いものだったから



その夜に渉から届いたメール


『どうして先に帰った?
話しがあるから明日はいつもの場所で』


メールの返信はしなかった
もうする必要もないだろう
私は渉の番号や数少ないメールを表示させて削除ボタンを押した



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