a square

「だーかーらー、一緒に行こーよーって言ってんじゃーん」

学校が終わって、帰宅途中。
一緒に帰っていた春と玲菜とは、さっきの曲がり角で別れたので、今は私と尚夏のみ。

無駄に元気な太陽のせいで、汗がダラダラ。おまけに、蝉が盛んに鳴いて、イライラ倍増。
なのに、尚夏がくっついて来るから、暑さとイライラ度は上昇するばかり。
さすがに許せなくなって、右腕に絡み付いてくる尚夏を引き剥がす。

「だー、もう! うっとうしいなあ、離れてよ」

「離れたから付いて来てくれる?」

「何故そこに結びつける! 行きませんってば」

そう答えると、尚夏は幼稚園児の様に、

「えー!? やだやだやだやだー。おかーさーん、一緒に来てよー」

と叫ぶ。

「みっともないからやめなさい。そしてお母さんではありません」

ピシャリ、と私が言い放つと、尚夏は舌打ちをした。おーい、聞こえてますよー。

「っていうか、なんで嫌なの? 用事あったっけ?」

さっきとは違い、真面目に訊いてきた。
……こいつ……。

「あんた……本気で言ってるの?」

まさか、と思いつつ、逆に訊ねてみる。

「え、なんかあった?」

──ああ、嘆かわしいけど、本気で言ってるわ。

私はため息をついて、尚夏に告げた。

「もうすぐ期末テストでしょ……。あと五日だよ? 勉強するのが普通でしょ」

尚夏は、一瞬フリーズした後、

「……まじで?」

と訊いてきた。
返事をする気力も失せた私は、小さく頷く。
その途端、尚夏が暴れ始める。

「ああああーっ! ヤバイ、全然忘れてたあああ! どうしよう!? どうしようミツ!」

「知るか」

冷たくそう言って、私はスタスタと、早足で尚夏を通り過ぎた。
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