a square
「よし、着替え終わったから、電話するね」

振り向くと、可愛らしい服に包まれた姉の姿。

左腰辺りに、赤い小さなハートと、銀色の筆記体(おそらくloveと書かれてる)が印刷された白いTシャツに、さっき私のクローゼットから出てきた、黒いスカート。それに、黒のハイソで、膝上まで覆われた細い足。
髪型もいつの間にか変わっていて、ポニーテールになっている。茶色と薄ピンクのシュシュが、なんとも可愛い。

「さすが私の姉、可愛い格好だ」

そう頷くと、尚夏は、

「そんな褒めるような格好じゃないよ! まあ……頑張ったけど……清太に会うんだし……」

頬を軽く染める尚夏。実に愛らしい。

「っていうか、そっちだって可愛いじゃん!」

「え、そう?」

私は、さっきの黒いチュニックの中に、白のキャミ。下は膝丈のジーパン。ウエストがゆるいので、ピンクのベルトで止めている(まあ、ベルトはほとんど見えないけど)。サンダルで行くつもりなので、裸足。
特に、爪や髪に何かしてるわけでもないし……。

「一体どこが?」

そう訊くと、尚夏は、

「そっちは、モトが良い!」

と、指を差してきた。

「双子に何を仰っているんですか」

そう即答して、私は準備をし始める。
携帯と……。あとノートと筆記用具かな。
大体用意し終わった時、

「双子でも、二卵性だし」

と、後ろから声が聞こえた。まだ言ってんのか……。
とりあえず、無視はしない事にした。

「まだ言ってんのー? まあ、二卵性だけど、同じ親じゃん」

「うん、そう」

「なら、絶対大半は似てるって。つかモト良くないし」

「え、でもさー。そういうそっちはどうなの?」

「は? 何が?」

「だからー。ちゃんと努力はしてるの? って事!」

「努力……? 洗顔は毎日丁寧にしてるけど……」

「ほら、結局私と一緒じゃん!」

「いや、あんたの洗顔は雑だよ、あんま言いたくないけど」

「あー……。ちょっと待って」

「? 何が――」

振り向くと、そこには困った姉の姿があった。
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