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「あんた、もうちょっと考えなさいよ」

やっと数学が終わって、私は、尚夏と戸松春(トマツハル)、そして、加藤玲菜(カトウレナ)と弁当を囲んでいた。
卵焼きを食べながら、私は春に言葉を返す。

「私は小声だったのに、キヨが大声張り上げるからバレたんだってば!」

すると、玲菜が笑いながら、

「えー、でも、ミツの声も結構大きかったよ?」

と言う。
うんうん、と頷きながら、春が私に訊く。

「なのに、全部遠藤のせいだと?」

「そう」

春は、大きく溜息をついた。

「はー。もう……。遠藤かわいそー」

「ミツは清太嫌いだからねー」

尚夏が苦笑する。「ちょっと待ちなさいよ、私はあんたのために!」って反論したかったけど、しない。
だって、したら尚夏がキヨを好きだって、バレてしまう。
それに、正直そんなに好きなわけでもないし。嫌いじゃないけど。

「遠藤、普通にいい奴じゃん。女子に優しいし」

「玲菜騙されてる、ただのタラシなだけだよ」

ずばっと言うと、玲菜はご飯を食べながら言う。

「もー、ミツ……。そんな事言ってたら、誰かに遠藤盗られちゃうよ?」

その言葉に、一番尚夏が反応した。

「え? 清太の事好きな子、そんなにいるの?」

尚夏が訊くと、玲菜が「知らないの?」と驚いた顔を見せる。

「結構遠藤ってモテるみたいよ? ほら」

玲菜が箸で指した方を見ると、そこには、女子から弁当を分けてもらうキヨの姿。
キヨの周りの男女が、大騒ぎしている。

「遠藤ー、これあげるー」

「え? 何? 弁当忘れたの? 馬鹿じゃん、ほら、これやるわ」

「それ藍那の嫌いなヤツじゃん! アタシのもあげるー」

「くっそ、清太羨ましい! 俺にもくれ!」

「お前はそのコンビニのおにぎり食ってろ! それより俺に!」

「あんたも弁当あるでしょーが!」

「いって! 殴るなよ大田!」

そんな男女の中心部で、キヨは黙ってお茶を飲んでいた。
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