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「あー、なんでこいつらは同じクラスなのに、俺らは違うんだろー。弁当不便だー」

キヨが言う。こいつら、とは間違いなく私と尚夏の事だろう。

「お前が弁当忘れなかったら良い話だろ。んじゃ、俺戻るわ」

踵を返して、キヨ兄が去って行く。あまりに少しな出番だな。

「おー、ありがとなー。よし、んじゃ、俺も戻るわ」

キヨが、元居たグループに戻りに行った。先ほどまで、集まっていた人は、自分のグループまで戻ったようだ。

「嵐は去ったか」

満足気に私が呟くと、玲菜がフフッと笑いながら言った。

「仲いいよね、何だかんだ」

その言葉に、春が反応する。

「ま、向こうはミツの事好きみたいだしね」

「あ、そっかー」と玲菜が納得する。
しかし、納得どころか理解もできない私。

「春センセー、質問でーす」

ズバッと手を挙げると、春が律義に、

「はいどうぞー、石田ミツ」

「さっき言ってたのは、どういう意味ですかー」

「言ったまんまの意味ですよ。って、あんたマジで言ってんの!?」

春が素に戻って、私に問う。

「え、ちょ、どういう事よ」

私も素に戻り、真剣に訊く。
春が目を丸くしたまま、小声で言った。

「遠藤が、あんたの事好きだって噂、すごい有名だけど……」

「なんだその噂は、流した奴問いただして、ちょっと切腹させてくる」

席を立とうとした私を、玲菜が止める。

「でも実際仲いいし……ねえ」

玲菜が、尚夏に話を振る。

──やめて、尚夏に、そんなこと訊かないで。

尚夏は、玲菜の問いに、どう答えるんだろう。
私にとって、すごく長い間。

尚夏が、ゆっくりと口を開けた。
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