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振り向いて、私は春に叫ぶ。

「ちょっと春!」

「ごめんごめん、まさかそんなにフラつくとは思わなくて! ……っていうか、あんたら、まさかカレカノ?」

「はァ?」

あまりにも言っている事が分からず、春に訊き返す。

「何がカレカノ?」

「あんたと遠藤よ。手ェ取り合っちゃってさ!」

階段を上りながら、春が笑う。

「え、あんなの普通じゃないの?」

「普通じゃないわよー。……あ、そっか。幼馴染だもんね。でも、私なんか最近じゃ、智とは話さないわよ、緊張して」

春が、久しぶりに幼馴染の小田智(オダサトシ)の話をした。小田とは、幼稚園の時から仲がいいらしい。

「ってか、あんたら……姉弟って感じよね」

クスッと笑う春。
姉弟……?

「姉弟ねえ……あながち間違っちゃ、いないかもしれないけど」

「そう考えると、あんたらが手取り合うのも、普通よねー」

そうかなあ、とは思ったが、やはり言わない。
ガラッと教室の扉を開けて、席に戻り、着替えを始める。
制汗剤の色んな匂いが混じり合って、少し気持ち悪い。

「ミツも使う?」

春が、汗を拭くためのシートを手渡してきた。

「ありがとう」

快くそれを受け取って、首の後を拭った。
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