「呼吸」
彼女とは婚約を交わしていた。
本当ならばもうとっくに式を終えて、新しい生活に慣れてきているところだ。
白いウェディングドレス、幸せそうに笑う君と僕。周囲からの祝福の言葉、泣きながら喜んでくれる父と母…。きっと、さぞかし幸せだっただろう。
しかし、それを叶わぬ夢のままに終わらせてしまったのがこの病気だ。現代の医療でも、助かる確率は3%にも満たない。
その事実を告げられた時、彼女は泣いていた。正直、目を逸らしたくなった。つい先日までは幸せそうに二人で笑っていたのに…