繭虫の眠りかた
不審を覚えつつも、これまで入ったこともない蔵の中へと兄たちに連れられて足を踏み入れ、

胡蝶は促されるまま、蔵の床に設えられた扉から軋む木の階段を降りた。

更に兄たちは、
蝋燭の灯火の中で、漆喰で塗り固められた重そうな分厚い扉を開けて


ここで待っているからと言って、膳を手にした胡蝶を中へと入れた。


背中を押された瞬間のどこか突き放されたような感覚と、己を飲み込んで後ろで閉まる地獄の門戸のような扉の音に言い知れぬ不安を感じながら、


周囲を見回して、胡蝶は驚いた。


刻限は昼過ぎ。

確かに胡蝶は真っ暗な蔵の奥底へと降りたはずだった。

しかし扉の外や蔵の中とは異なり、
地下にあるその場所には陽光が届いている。

外の明るさからは程遠いが、屋敷の中のように薄明かりに照らされ、辺りのものを見る分には問題がない。


そして確保された視界に真っ先に飛び込んできたのは──太い木製の格子だった。

まるで、罪人を入れておく檻(オリ)のような──


「ような」ではなく、檻だ。

目の前にあるのは、まごうことなく檻だった。
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