繭虫の眠りかた
牢の格子の隙間は、そこから膳を中へ入れることができるほど広くはない。

どちらにせよ、料理を牢の中に運び込むには壁際に作られた戸を開けなくてはならなかった。


弟だという少年に中へ入ってほしいと言われて、
胡蝶は特にためらうこともなく、兄たちから手渡されていた鍵を使って牢の戸を開けた。


外へと通じる分厚い漆喰の扉は胡蝶の背中で固く閉じられているのだし、扉の向こうには兄たちもいる。

この状況で木格子の牢の戸を開けたところで、中の者が逃亡することはできない。


牢の中の少年も、それを理解しているのだろう。

逃げるような素振りもせず、
それどころか身じろぎ一つせず、
じっと胡蝶に視線を送っているだけだった。


だから胡蝶は、

何の警戒もせずに、
牢の戸の横に一度膳を置き、
戸に設えられた錠を開け、
あたかも襖を開けて普通の座敷に入る時のように作法を守って、膳を中へと運び込み自らも檻の中へと入った。
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