セナの冒険
背中にはおじいさんの言っていたとおり、消しきれていない傷があった。
深い…
えぐられてる…
こんな傷みたことない…
チトから瓶を受け取り、淡い黄緑色の薬を塗りはじめる。
「…本当に起きるのかな」
おじいさんの言葉を信じていても、頭の片隅から消えない不安な気持ち。
もう弱気になるのは嫌なのに、このまま、この安らかな寝顔のまま、永遠に目を覚まさない気がして…
「…大丈夫、きっと起きますよ」
そんな私の独り言にチトが優しく答えてくれる。
「…そう、だよね。ごめんね変なこと言っちゃって」
「いえ、全然かまいませんよ。……いつ目が覚めるかわからない状況で、待ち続ける不安な気持ち…僕もわかりますから」
「え?…」
僕もわかる…?
チトの辛そうな、哀しそうな笑顔を見て、私はなにかに気付いた。
僕もわかる、って…
誰か大切な人が、眠ったままの状態なの…?
あ
そういえば…
「チト……チトのお父さんとお母さんは?」
「…え」
…やっぱり。
きっとチトは、お父さんとお母さんが目覚めるのを、信じて待ってるんだ。
勝手な推測だけど、チトの驚いた表情に確信を得た。