セナの冒険
「…よし、これで出来上がりですね。セナさん、わざわざ手伝って頂いてありがとうございました」
チトは盛り付けの最後の仕上げを終え、手をパンパンと叩き、私に頭を下げる。
「…いいえ……私、何の役にも立てずに……ごめんなさい…ほんと…」
そう。
私の技術ではチトを手伝うなど不可能に近く、野菜の皮をむいたり味見をしたりするだけで、何の役にも立てなかったのだ…。
料理上手なロイドだったら手伝えたかもしれないけど、それも怪しい…
そのくらいチトはハイレベルな調理を繰り広げていた。
「そんなことないですよ!皮をむいて貰えるだけで、ずいぶん手間が省けるんですよ?それに、自分以外の人に味見をしてもらえるのだって大切なんです。ありがとうございます、セナさん」
「…そ…そうかな…?…少しでも役に立てたなら、良かった」
チトの柔らかな笑顔につられて、思わず私も頬がゆるむ。
「あ!そうだ、セナさん。僕、料理を広間に運ぶので、皆さんを呼んできてもらえませんか?」
「ん、オッケー!」
調理場を出てまずロイドの部屋へと向かうと、ちょうど皆集まっていた。
輪になって……トランプ?をしている。
メンバーは…カズキ、ロイド、アイク………あ、おじいさんも?
サーシャは椅子に座って本を読むのに集中しているみたいだった。
「あっセナ!どこ行ってたんだよ!?」
カズキが一番に私に気付き振り返る。
「あ、言ってなかったっけ?チトの手伝いに行ってたんだよ」
「手伝い?メシの仕度?」
私に言葉を投げかけながら、おじいさんの持っているトランプを迷いながらも引き抜く。
と同時に、
「うぉあっ」
ボオォッ!!!
とトランプから炎が噴き上がり、カズキの頭は火に飲み込まれた。
「かっ……カズキ…!?」