Dear...
その言葉に、階段を上がる足が止まる。
「あいつだよ、あいつ」
あいつ、うちのクラスでのあいつといえば。
「人をいじめるのが大好きなあいつだよ」
「しかも転校生だし、絶対やられるって!」
洗礼だよ、洗礼、と笑う。
「・・・そんときは、」
もう一度、あたしの足が止まる。
「え、何よ・・・」
あたしの顔がだいぶ怖いのか知らないけど、怯えた顔になっている。
「あたしが助ける」
それだけ言ったあたしの後姿を見て、明日香は「かっくいー」と一言だけ言った。
自分はどれだけ傷ついてもいい。
傷つくのなんて、結構慣れてるから。
深く扉を閉ざして、その中には誰も入らせない。
守ってやらなきゃ、なんていうのは偽善かもしれない。
傷つくことも、傷つけることも知らないようなあんたに、
傷を負わせるのが嫌だった。
それも、自分が一番嫌なことで。
守ってやらなきゃ。
そう思ったのに。
その『洗礼』は、思ったよりも複雑で、
絡み合って解けなくなった糸みたいに。
本当に、複雑なものだった。
教室へ入ると、クラス中がカコの話で持ちきりだった。
「未来、転校生来るんだってー」
「知ってるよ、同じ電車だった」
「えー、マジ?どんな感じ?」
んー、と答える。
「近づいたら、死にそう」
「・・・何それ」
席につく早々、担任が入ってきた。
一気に静かになる教室。
あたしは窓側の、一番後ろの席だった。
教室を見渡すと、あたしと反対側の一番後ろ。いわゆる廊下側がカコの席だ。
安心するのも束の間、その前は『あいつ』だ。
担任が一通り話をすると、入って来い、と言った。
教室がざわめき、俯き加減で入ってくるカコ。
前向いてろって言ったのに・・・。
案の定、『あいつ』は笑ってる。
「今野加胡!みんな仲良くしてやってねー」
はーい、と生徒のやる気のない声。
不安そうに顔を見上げ、見渡すカコ。
あたしが笑って手を振ると、やっと笑う。
「大塚の隣なー、じゃあ次は数学」
先生が出て行くと、カコは席に座った。
と同時に、カコに話しかける『あいつ』。
何かを話すと、カコは頷いた。
前を向いた『あいつ』はそれに満足そうに笑った。
「あいつだよ、あいつ」
あいつ、うちのクラスでのあいつといえば。
「人をいじめるのが大好きなあいつだよ」
「しかも転校生だし、絶対やられるって!」
洗礼だよ、洗礼、と笑う。
「・・・そんときは、」
もう一度、あたしの足が止まる。
「え、何よ・・・」
あたしの顔がだいぶ怖いのか知らないけど、怯えた顔になっている。
「あたしが助ける」
それだけ言ったあたしの後姿を見て、明日香は「かっくいー」と一言だけ言った。
自分はどれだけ傷ついてもいい。
傷つくのなんて、結構慣れてるから。
深く扉を閉ざして、その中には誰も入らせない。
守ってやらなきゃ、なんていうのは偽善かもしれない。
傷つくことも、傷つけることも知らないようなあんたに、
傷を負わせるのが嫌だった。
それも、自分が一番嫌なことで。
守ってやらなきゃ。
そう思ったのに。
その『洗礼』は、思ったよりも複雑で、
絡み合って解けなくなった糸みたいに。
本当に、複雑なものだった。
教室へ入ると、クラス中がカコの話で持ちきりだった。
「未来、転校生来るんだってー」
「知ってるよ、同じ電車だった」
「えー、マジ?どんな感じ?」
んー、と答える。
「近づいたら、死にそう」
「・・・何それ」
席につく早々、担任が入ってきた。
一気に静かになる教室。
あたしは窓側の、一番後ろの席だった。
教室を見渡すと、あたしと反対側の一番後ろ。いわゆる廊下側がカコの席だ。
安心するのも束の間、その前は『あいつ』だ。
担任が一通り話をすると、入って来い、と言った。
教室がざわめき、俯き加減で入ってくるカコ。
前向いてろって言ったのに・・・。
案の定、『あいつ』は笑ってる。
「今野加胡!みんな仲良くしてやってねー」
はーい、と生徒のやる気のない声。
不安そうに顔を見上げ、見渡すカコ。
あたしが笑って手を振ると、やっと笑う。
「大塚の隣なー、じゃあ次は数学」
先生が出て行くと、カコは席に座った。
と同時に、カコに話しかける『あいつ』。
何かを話すと、カコは頷いた。
前を向いた『あいつ』はそれに満足そうに笑った。