Dear...

「大丈夫だよ」
全部を見抜かれたかのように言われる言葉。
「大丈夫、未来に頼っていいんだよ、辛かったら。あたしでもいいし！」
どーんと来い！と明日香が腕を広げる。
視界が揺らぐ。人ってこんなに暖かかったっけ･･･。
「未来は強いからねー、ここらへんの女の子には超有名」
「だから、一緒にくっついてると嫉妬されちゃうかもしれないけど」
再び頷くカコ。
「あたしも最初は嫉妬されたよー？でも未来が守ってくれた。」
「だから安心してね」
頭を撫でられて、今までの緊張が一気に解ける。

「少しずつ、分かっていけばいいよ」

けど、まだ言えないことがある。
今年で16歳。
あと4年、わたしの命はあと4年あるかないか。
強くなって、悔いのないように。

すべての教科書とノートに名前を書き終える。
授業まであと五分。
「未来遅いねー･･･」
未来ちゃん、大丈夫かな。
少し不安になっていると、クラスの女子が集まってきた。
「あの」
教科書に目を通していたカコが顔を上げる。
「おぉ、来た来た」
再び？マークになり、明日香を見る。
明日香はただ頷いて、机に突っ伏した。

「･･･なんですか？」
カコが言うと、一番先頭に居た女の子が言う。
「未来さんとは友達なんですか？」
「え、あ、はい･･･」
「あんまり、未来さんと仲良くしないで貰いたいんです」
その言葉には、突っ伏していた明日香も顔を上げる。

この感じ。
言い寄られる感じ。
思い出す･･･。

「それは･･･」
「出来るだけ、でいいんです」
カコが俯くと、明日香が助け舟を出す。
「嫉妬は怖いねぇ」
ぼそ、と呟いた声に女子が女の子が再び言う。
「明日香さんは黙っててください！」
強い口調。カコの肩が震えた。
「未来は未来のもの、あんたらみーんなのもんじゃないの」
「でも･･･」
「かこっちゃんと仲良くしてても、誰と仲良くしてても未来の自由」
言い切ると、女子たちは不満そうに席に戻っていった。

「だいじょぶ？かこっちゃん」
そのまま俯いているカコ。

過去が思い出される。
思い出したくないはずの過去。
それが、不意に思い出させられる。
強制的に。引き出されていた。