【完】ヤンキー女→清楚女『逆高校デビュー』
「ちょっとごめんな」
そう言って私の座っている後ろから、
覆いかぶさるように小島も旗に手をついた。
右手は私の手に添えられていて、
一緒に墨をつけた。
私の真横に小島の顔があって、小島の息が私の耳にかかる。
「じゃあ【1】からいくぞ」
耳元すぐで、低音の優しい小島の声がしてゾクゾクしてしまった。
私は右手の力を緩めて、小島の力に任せた。
すっ…と
ただの【1】という棒一本が
こんなに素敵だ…と思ったのは初めてだった。
「よし、次は【2】」
墨をつけずにそのまま【2】を書きはじめた。
いい感じにかすれて、
【1】と【2】だけが浮くこともなく
小島のおかげで、すごく立派な【1年2組】が出来上がった。
私はすごすごと小島の胸の下から抜け出した。
「ありがとう…」
私はなんだか照れくさくて、ボソッと言った
「いいえ、どういたしまして」
と、小島は優しく笑ってペコッと頭を下げた。
その仕草が、ちょっとかわいいと思ってしまった。