終学旅行
 潤の話は、犯人たちが投げた筒のようなものから煙が出たところで唐突に終わった。

「煙はあっという間にバスの中に充満しました。銃声が聞こえたような気がしたけれど、生徒たちの悲鳴でよく聞こえませんでした。それから目が痛くなって・・・そこからは記憶がありません。気がついたら病院にいたんです。おそらく睡眠剤か何かで眠らされたのではないでしょうか。・・・僕の話はここまでです」
話を終えると、潤は湯飲みの中身を飲み干した。異様に喉が渇いていた。

「ありがとう。とてもよく分かりました。つらい記憶をたどっていただいたこと、感謝します」
植園が頭を下げた。かすかに甘い香りがした。

「不思議だったんです。どうして僕たちは病院にいたのですか?誰が助けてくれたのですか?」
潤は、話しているときに気づいた疑問点を投げかけた。

「ああ、それはね」
植園は自分のメモを取り出すと、
「何人かの生徒はおそらく10分くらいで目が覚めたようなの。彼らは、それでもしばらく様子を伺っていたらしいんだけど、あたりに人気のないのを確認した後、山を降りて助けを求めたのよ」
と言った。
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