戯れ人共の奇談書

「ん~♪ んん~♪」

「すんません、マジで勘弁してください」


「この俺に舐めた口を利いた罰だ」

「マジかよ……」


二人は海沿いの石畳の道を風下へ歩いていく。

機嫌よく腕を振るユェと、珍妙な歩き方をするロイド。

これがユェの能力のようだ。


「イカすぜロイド。エレガントだ」

「てか、この踊りはなんだよ」


フィンガースナップ、バックスライドで歩き、時折ターンを決める。


「ん? 文献で読んだ、架空の国で一部に好まれた歩き方だ」

「架空?」

「あぁ。珍しい歩き方だろ」

「いや、マジで勘弁してくれ」


嫌そうな表情をしても、フィンガースナップの音は軽快に響き、滑らかな動作で揺れのない見事なバックスライド。

そしてキレのあるターン。

「完璧だ!」

「うるせぇ!」
< 11 / 62 >

この作品をシェア

pagetop