戯れ人共の奇談書
「ん~♪ んん~♪」
「すんません、マジで勘弁してください」
「この俺に舐めた口を利いた罰だ」
「マジかよ……」
二人は海沿いの石畳の道を風下へ歩いていく。
機嫌よく腕を振るユェと、珍妙な歩き方をするロイド。
これがユェの能力のようだ。
「イカすぜロイド。エレガントだ」
「てか、この踊りはなんだよ」
フィンガースナップ、バックスライドで歩き、時折ターンを決める。
「ん? 文献で読んだ、架空の国で一部に好まれた歩き方だ」
「架空?」
「あぁ。珍しい歩き方だろ」
「いや、マジで勘弁してくれ」
嫌そうな表情をしても、フィンガースナップの音は軽快に響き、滑らかな動作で揺れのない見事なバックスライド。
そしてキレのあるターン。
「完璧だ!」
「うるせぇ!」