戯れ人共の奇談書
「それ、本当なのか……?」
「有名な話よ? 既にカラスの連中も天使から権限を剥奪、及び指名手配にも乗り出してる」
ショックを隠せない様子のロイドに、冷静に説明をする少女。
暗くなって来たからか、冷たい海風が三人を包み込む。
「額は?」
ユェは比較的、冷静のようだ。
「生死問わずに2億(J)。たった一人の女の子にトップクラスの懸賞金を掛ける、カラスの気が知れないわ」
少女も冷静を装っていたが、言葉を重ねるうちに、悔しさの念がこみ上げて来たのか、拳を血が滲むまで握ってしまっている。
「それより、聞きたい事が出来た。あなた達と天使は知り合い?」
「ん? あぁ、聖戦の時少しばかり世話になってな。ロイドに至っては仲が良かったな」
「そう……」
少女は表情を曇らす。
「そういうあんたは天使と、どういう関係なんだ?」
「天使は私の姉さん」
「リース(天使)の妹……、ミシティアか?」
後ろで呆然としたままだったロイドが、二人の会話に参加した。まだ立ち直れていないようだが。
「そう、ミシティア。ジャックフロスト(氷の魔女)のティアで通ってるわ。それより、協力してくれる?」
「おぅ、その話が本当なら、聖戦での恩もある。協力するぞ。俺はロイド、傭兵だ」
「暇だし構わないか。同じく傭兵、ユェ」
特に握手をするでもなく言葉少なにその場は終え、三人は歩き出した。暗くなったトレンカの街を。
「それじゃあ、宿泊先を見つけたら早速作戦会議ね」