戯れ人共の奇談書

先ほどの笑いはどこへやら。

考えもまとまらず移ろうのは時間のみ。


「お手上げね。こうなったら地道に探しましょ」

「それしかないか」


収穫量の乏しい会議はたったの数分で、ミシティアとユェの声で終わりを告げた。

黒幕の有無などわかる筈もなく、場所も当然のように天使も飛び回る為、わからない。

最も二人を悩ませたのはそこだ、天使の移動基準。

何かの法則や決まりを率いているのなら行き先が掴めそうなものだが、天使の性格も踏まえると気まぐれの可能性が極めて高い。


「とりあえず、聞き込みと騒がしい方へ行ってみるか。ロイドもそれでいい――」


ユェの振り返る先には、大の字に寝そべり心地良さそうな寝息を立てるロイド。

細くなるユェの目つき。懐に手を入れ、神業と呼べるまでの早さで“それ”の引き金を引く。


タァァン――。


乾いた音が響き、それと同時にロイドの体がその場から消えた。

乾いた音を立てた“それ”の口は煙を吐き、それの向く先には穴が開いている。その1cm隣にはロイドの顔が有った場所だ。


「危なっ! マジで撃つ奴があるか! てか何で撃たれた!?」


木張りの天井に蜘蛛の様に張り付き、驚くロイド。

あの一瞬で、この芸当がなせるのは能力有ってのこと。


「てめぇが会議中に寝たからだ! これが(道化師)連合会だったら軍法会議物だ!」

「あんた達って、いつもこんなに騒がしいわけ?」


怒鳴り返すユェを見て、呆れた顔をするミシティア。

「バカコンビ……」
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