戯れ人共の奇談書

騒動も落ち着き、ふけていく夜。
ランプの灯かりが弱弱しくなってきた頃。


「ふぁ~……ふぅ、私もそろそろ寝ようかな~」

眠気を覚えるミシティアに、フォレスト(銃)の手入れをするユェ。再び大の字で寝息を立てるロイド。


ロイドとユェにとっては、久しぶりに地面以外の寝床となる。


「明日早いだろうから寝ておけ」

銃からは目を離さないユェ。


「ユェは?」

「俺はコイツの手入れがあるから。ランプ、気になるなら消していいぞ」

取り外された銃口部分にブラシを入れ、ススを払う。弾を一発しか使っていないからだろう。綺麗なままだ。


「ねぇ、なんで二人は旅をしてるの?」


ベッドの上で俯せに寝転ぶミシティア。目つきは好奇心による輝きは持っておらず、影がさしている。


「ん? ロイドは神とやらに抗う為、旅をしている。持っていた物のほとんど奪い、要らない物を与えた神を恨んでいる。

俺は罪人。逃げる為に旅をしている。自分達を守る為にな。

……よし、こんなもんか」


話している最中にも手入れを続け、納得がいったようだ。確認するように呟き、バラバラになった部品を組み立てていく。


「道化師の運命(さが)だな。選ばれなかった事に対する八つ当たり。滑稽な末路を辿るピエロ達」


「遣る瀬無いね」


語り部は興味なさそうな表情で銃の組み立てに没頭し、聞き手は何故か曇った表情でロイドを見た。

笑えぬ傷を持つも、笑い続ける同じ年頃と思われるピエロを。
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